青学メソッドに学ぶ

 青山学院大学陸上競技部長距離ブロック・原晋監督の著書を読みました。私自身の日藤での外部指導者の経験を踏まえて読んでみたのですが、いかにして組織作りをしていくか、とても興味深い内容でした。本も長すぎず、一項目もコンパクトでわかりやすく、読み進めるのも楽でした。以下にいくつか思ったことを書いていきます。

■組織と自主性
 原監督によると、組織の進化には4つのステージがあるとのことです。

・ステージ1:部員に知識や技術を細かく教えていく段階
・ステージ2:スタッフを養成して少しずつ権限を与える
・ステージ3:さらに選手の自主性を重んじる
・ステージ4:コーチング

 ステージをアップさせると同時に、徐々に部員に責任を与えていくのだそうです。原監督が就任当初から、ステージ1から2へ移行するだけでも3年はかかったとのことです。

 日藤にいた頃の私は最初から自主性を求めてしまい、ステージ1、2を飛ばして、いきなり3から入ろうとしていたかもしれません。何の土台も出来ていないところにいきなり自主性を持たせる、といっても無理な話でした。自主性と自由、自分勝手を履き違えないようにしないといけませんでしたが、そこも難しかったと思います。もちろん練習メニューを提示する際は、「なぜこのメニューを行うのか」という狙いは説明していました。

 ただ、私は土曜日の週1回しか顔を出すことができなかったので、どうしても「自分で考えることのできる選手になってほしい」とも話していました。ちょっと難しかったなと思います。ただ練習メニューだけ作って送って、通信教育みたいな形になってしまっては選手もモチベーションが上がらないだろうし、とにかく土曜だけでも毎週行くようにはしていました。

■コミュニケーションについて
 当時、日藤の練習や試合の時の集合やミーティングは指導者が話して終わる形でした。部員はそれに対してなんでも「はい!」と返事する、LINEでの連絡に対してなら「承知しました」と返信するだけでした。私は部員一人一人がどう感じて、どう考えているかを知りたいと思いました。

 そこで私は一方通行にならないよう、中長距離ブロックの集合やミーティングの際は、毎日1人にその日の練習や試合で何を考え、どう感じたか、あるいは意見などを言わせることにしました。仲間が何を考えているかを共有することで意識の面を改革したいと思ったからです。自分の言葉で話すことができる選手はブロックを動かす力を持っていると思います。

■チーム目標と個人目標
 日藤では神奈川県高校駅伝に出ることをチーム目標としていました。個人目標は部員のレベルに差がありましたが、成果としては、例を挙げると5000m20分台の選手を17分台に、800m2分12秒を2分00秒まで引き上げました。これらの記録では個人でインターハイ、チームで駅伝の標準突破とかはとても考えられるような話にはなりませんが、自己ベストという結果が出れば部員と一緒に素直に喜ぶことはできました。

 原監督仰るように、「そんなんじゃまだまだだめだ」という指導だと選手のモチベーションも上がりません。全体の底上げがチーム目標にも繋がることはとても共感できる話だと思いました。

 なお、当時の日藤は特にエースといえる存在もおらず、人数も少なかったこともあって、どちらかと言えばみんなで駅伝出場を目指そう、という「下から押し上げる」形のチームでした。私の性格からしても、上から引っ張ってついてこれない選手を切り捨てるのは苦手でした。そういう面ではまだ私に向いているというか、やりやすい状況ではあったと思います。ちなみに駅伝には4年目でようやく出場できました。

■自分に責任を持つ
 1年が経過して新たにブロック長を選出する際、中長距離ブロックは部員に話し合って決めてもらいました。私が求めていた自主性には、自分たちの言動に責任を持ってほしいという思いも込めていました。極力部員たちに決めさせたいと思っていました。指導陣が決めたブロック長、他人の立てた練習メニューには文句が言えるわけです。もう少し上記のステージ1、2を踏まえた形を取れていれば、練習メニューを部員たちに考案させる日があってもよかったなと反省しています。

 また、ブロック長に選んだということは、そのブロック長への協力も併せて認めたことになると考えます。ブロック長任せ、幹部任せではないことが組織として機能するには大事だと思っています。

 部員たちは一選手であるとともに、中長距離ブロックの一員でもあるわけです。どうすれば上記のようなチーム目標を達成できるかという点を、一人一人が考えられないとうまく組織としては機能しないわけです。

■終わりに
 もっと細かい点も色々と書きたいことはありますが、ネタバレ、本の内容に触れすぎることになるので控えます。読み終えて、私がまたどこかで指導をする機会があるかといえば、その可能性は極めて低いです。

 ですが、がちがちに管理するのではなく自主性を持たせて組織を作り上げていくという考え方に触れて、とても共感できたのは良かったです。私は4年間という短い間しか外部指導者を務められませんでしたし、部員とうまくいかないことも多かったので、なんとなく、少し救われたような気持にもなりました。


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