東京2025世界陸上
Every second, "SUGOI"


 一昨日9月21日をもって、9日間にわたって開催された陸上競技の世界選手権(通称世界陸上)の東京大会が幕を閉じました。私もメイン会場となった国立競技場へ3日間、足を運びました。世界中から集まったアスリートたちが繰り広げる熱戦を十分に堪能しました。

■世界陸上との出会い
 世界陸上東京大会は1991年にも開催されました。当時私は中学2年生でした。会場となった旧国立競技場に、学校の陸上部の部員たちと一緒に1日だけ見に行きました。マイケル・ジョンソンが200mで優勝、金メダルを獲得したレースが印象に残っていますが、それ以外はこれといってあまり覚えていません。あまり世界の陸上競技について興味を持てていなかったのがその理由だと思います。そもそも世界陸上が何なのかもあまりよくわかっていなかったと思います。

 世界陸上は1983年に第1回大会がフィンランドのヘルシンキで開催され、1987年の第2回がイタリア・ローマ、そして1991年に第3回が東京で開かれました。オリンピックとは別に陸上競技の世界一を決める大会であることはわかっていましたが、当時の私は箱根駅伝に傾倒していました。

 興味を持つようになったのは高校生、大学生になってからだったと思います。当初は日本代表選手を応援していましたが、特に大学生になって色々な種目の選手に知り合いが増えたことやインカレの影響もあって、次第に色々な種目や選手に興味を持つようになりました。

■お客さん入るのかな?
 コロナ禍の東京五輪を経て、2025年に東京で世界陸上を開催することが決まったというニュースを聞いた時、正直に言って最初に出て来た感覚は「不安」でした。「陸上競技で国立競技場のスタンドを埋めることができるのか?」というのが率直な感想でした。常々「国立競技場からトラックを撤去して球技専用にしろ」という意見も耳にしていましたので、余計に他の競技団体や世間の目が気になったものです。

 また、2007年に大阪で行われた世界陸上では会場の長居陸上競技場があまりにも空席が目立ったことを覚えていたので、それも不安を助長させていました。「ガラガラのスタンドになったら、選手はやる気をなくしたりしないかな…。」と。東京大会のチケットは一応販売開始日に購入しました。あとはもうどれだけチケットが売れるか、祈るような気持ちでした。

■圧巻の光景
 夏を迎え、徐々に世界陸上が近付いてくることを実感し始めた頃、チケットの売れ行きが好調だというニュースを目にしました。目標50万枚とのことでしたが、それは達成しそうとのことで、国立競技場を満員にしようという気運も感じられた時、不安は「ひょっとして盛り上がるかも?」という期待に変わり始めました。

 そして迎えた9月13日土曜日。開会式に先立って行われた午前中の35km競歩。神宮外苑の周回コースにはファンの方々がぎっしり。鈴なりの大観衆が応援を続けている光景をテレビカメラを通して見ることが出来ました。さらに夕方からのイブニングセッションでは5万を超える観客が国立競技場に集まっていて、日本陸連がアピールしていたまさに「国立満員」の光景が目に飛び込んできました。

 選手が紹介される度に巻き起こる拍手と大歓声。注目選手や日本選手だとそれがさらにヒートアップしていて、「これが本当に日本で行われている陸上競技の光景なのか?」と目を疑いたくなるくらいでした。

■陸上競技でもできるんだ!
 私は大会3日目、4日目と9日目を見に行きました。千駄ヶ谷駅を降りた時から沢山の人。野球やサッカーでは見慣れた光景ではありましたが、「陸上競技でこれだけの人がみんな見に行くんだ」と思うと気分は高まりました。国立競技場周辺では各国のメディアの取材を受ける陸上ファンの方々もいらっしゃいましたね。

 そしてゲートでの手荷物検査とチケットチェックを経て国立競技場へ。エスカレーターで3層席へと上り、スタンドへ。そこで見た景色は忘れられません。本当に国立競技場のスタンドが観客で埋まっていました。

 競技が始まってからは土曜日のテレビで見た大歓声を実際に体感。イブニングセッションは大体3時間ちょっとなのですが、もう時間はあっという間に過ぎました。選手が見せる世界レベルのパフォーマンス、それを後押しする観客の拍手と地鳴りのような大歓声。陸上競技でここまで盛り上がった光景を、私は見たことがありませんでした。場内MCも音楽を流すDJも、競技役員もボランティアも、「会場が一体となる」ということはこういうことなんだろうなと思いました。競技を終えた直後の優勝者にスタジアム内でインタビューする試みも盛り上げるのには良かったと思います。個人的にはアップを終えた選手を拍手で送りだすボランティアの方々の姿に、日本のおもてなし、温かさを感じました。

 駅伝やマラソンで沿道に沢山の方々が応援にいらしている光景は日本でもおなじみだと思います。そういった方々を陸上競技の試合に、スタジアムに来ていただくにはどうしたらいいのか、ということを学生時代から常々考えていました。でも今回の満員のスタンドを見て、「陸上競技でもできるんだ!」と実感しました。競技を見られたことよりも、この目の前に広がる光景が何よりも嬉しかったです。

■テレビ中継も熱い!
 世界陸上を見ている方々は国立競技場に集まった方々だけではありません。多くの方々がテレビで観戦していたことと思います。日本では1997年のギリシア・アテネ大会からTBSが生中継をしています。MCは言わずと知れた織田裕二さんと中井美穂さんで長らく続いてきましたが、2022年のアメリカ・オレゴン大会をもって織田さん、中井さんは卒業となりました。しかし織田さんは今回の東京大会にスペシャルアンバサダーとして復帰され、中井さんはゲストとして1日のみでしたがテレビ出演されています。今大会限りの復帰とのことですが、やはり織田さんがいらっしゃると熱量が違いますね。

 1997年当初は賛否両論あった織田さんのMCも、年月を経るにつれて「世界陸上=織田裕二」のイメージがお茶の間に定着。私も陸上競技を好きになって楽しんでいる織田さんの姿には好感を持っています。それは今回TBSのアンバサダーとして抜擢された今田美桜さん、同じくTBSの応援サポーターのKさんに対しても同様で、お2人とも陸上競技経験者ということもあって、選手のパフォーマンスに終始大興奮、一喜一憂している姿が映し出されていましたが、本当にご自身の言葉で楽しんでいることを伝えていて良かったと思います。

 気の利いたコメント、深いコメントなんかできなくてもいいんです。好きになって、楽しんでくれれば、それだけで伝わります。私も国立競技場では「凄い!」しか言っていません。あと、個人的には常に選手に寄り添うインタビューをしていた石井大裕アナウンサーも、今大会を伝えるうえで重要な役割を果たしていたと思います。

■終わりに
 大会最終日の観戦を終えて帰宅途中、もっとロス状態になるのかなと思っていましたが、意外とそのようなことはなく気分は落ち着いていました。大事なのはこの大会の成功(サブトラックを競技場のそばに用意できなかった等の課題はありますが)を一時的なブームで終わらせない事だと思います。1991年の東京大会でも期間中に延べ58万1462人の観客を集めましたが、その後の陸上競技の人気に繋がったかというと正直微妙な所だったと思います。

 今回はSNSなどで陸上競技経験者ではない方々や著名な方々も沢山国立競技場へ足を運んでくださったようで、皆さん一様に選手のパフォーマンス、会場の盛り上がりを楽しんでいただいた旨の内容を投稿されていました。

 このSNSの普及や、選手のプロ化、日本の人口減少に伴う部活動の地域クラブ移行をはじめ、1991年とは日本の陸上競技を取り巻く環境も変化している点が多いのかもしれません。それでも、現地で、テレビで観戦した方々が「陸上競技もおもしろいな」と思っていただいたり、子どもたちが少しでも陸上競技やスポーツに関心を持ってアスリートを志してくれるようになれば、この大会が真の意味で成功したと言えるでしょう。

※参考:入場者数と視聴率

■入場者数
・9月13日(土)DAY1(9月13日21時時点の速報値)
モーニングセッション:32,739人
イブニングセッション:56,819人

・9月14日(日)DAY2(9月14日21時時点の速報値)
モーニングセッション:30,080人
イブニングセッション:57,528人

・9月15日(月・祝)DAY3(9月15日21時時点の速報値)
モーニングセッション:33,144人
イブニングセッション:53,124人

・9月16日(火)DAY4(9月16日21時時点の速報値)
イブニングセッション:37,463人

・9月17日(水)DAY5(9月17日21時時点の速報値)
イブニングセッション:35,975人

・9月18日(木)DAY5(9月18日21時時点の速報値)
イブニングセッション:57,327人

・9月19日(金)DAY7(9月19日21時時点の速報値)
イブニングセッション:58,643人

・9月20日(土)DAY8(9月20日21時時点の速報値)
モーニングセッション:25,818人
イブニングセッション:58,221人

・9月21日(日)DAY9(9月21日21時時点の速報値)
モーニングセッション:23,575人
イブニングセッション:58,723人

・総入場者数:619,288人

■視聴率
9月13日 19時〜22時半に世帯平均視聴率17.0%、個人視聴率10.7%。
9月14日 19時〜22時54分に世帯15.5%、個人9.9%。
9月15日 19時半〜22時57分に世帯16.5%、個人10.6%。
9月16日 19時半〜22時57分に世帯16.1%、個人10.1%。
9月17日 19時〜22時40分に世帯14.4%、個人8.9%。
9月18日 19時〜22時57分に世帯16.7%、個人10.2%。
9月19日 19時半〜22時54分に世帯16.1%、個人9.8%。
9月20日 19時半〜22時に世帯19.6%、個人12.9%。
9月21日 19時〜22時54分に世帯19.1%、個人12.8%。

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