スポーツシステムの新しい形

 鹿児島のSCC出身の上原美幸選手(第一生命)が五輪代表(女子5000m)に決まりました。この事の何が凄いかというと、SCCの「まずは老若男女が楽しんでスポーツをする→その土台、延長上に競技やオリンピックがある」というスタンスのクラブから選手が輩出されたことです。

 私が見ている学校の部活動だと、ともすればやる気があるない、速い遅い、強い弱いだけで物を見てしまいます。いや、私も見てしまいがち。強化をするということだけ考えたチームなら、全員を同じ方向に向かせて、それはそれである意味楽ですし、結果を出すという目標に対しても手っ取り早いと思います。私は部員に対して、極力「やる気ないね。」とか言わないようにしてますし、もし仮にインターハイはどうでもよくて、ただ身体を動かすことを楽しみたい、という部員が来ても拒まないという話はしたことがあります。が、部活には部活の規則や方針があるので、なかなか多様性が云々とも言っていられないのもまた事実。もちろんインターハイに向かってチーム一丸となって練習をするチームの姿も、それはそれで尊いですし、スポーツの一つのあり方です。そんな中で私は「どうしたら、陸上競技を好きになって楽しんでくれるかな。」と考えています。部活の指導者としては、ちょっと変わり者だと思ってますし、言ってしまえば異端かなと思います。私はクラブを作ろうとして失敗した人間ですが、常々学校スポーツは今の日本のスポーツでは切り離せないものだなと思いますし、でも学校スポーツだけではスポーツは成り立ちにくくなっているとも思っています。

 これは私が見聞きした話と想像なので、関係者の方々には大変申し訳ないのですが、SCCには上記のようにしっかりとした理想の形があって、その理想を叶えるための変化がありつつも、16年間活動を継続していらっしゃると思います。私は学校スポーツや企業スポーツとの連携、隙間を埋める形(専門の指導者がいない問題点や、逆に選手が指導者や場所を選べる等)で、総合型スポーツクラブが機能できることはあるのではないかと思っていました。今回は学校とクラブとがうまく融合した結果、上原選手が高校トップクラスの選手となり、実業団に進むことになったと思います。実業団選手は知り合いに何人かいますが、それは厳しい世界だと思います。結果を出さないといけないとは思います。でも、ベースが「みんなでスポーツを楽しみ、支えあうこと」から育った選手というのは、決して辛いことだけではなく、走ることを純粋に楽しめる、周りの応援を自分の力に変える素養を持っているのではないかと思います。そういう育った環境、人間的な下地って大事なんだろうなと。インターハイにバスを貸し切って、学校関係者だけでなく同じ地域の方々が上原選手の応援に行くというのもなかなか聞かない話ですし。

 私は鹿児島にこれまで2回行きました。それまで総合型、多世代型という言葉は聞いていてもなかなか目にする機会はありませんでしたが、鹿児島で実際に目の前で何百人という会員が同じ場所でスポーツを楽しんでいる光景は、本当に新鮮で壮観でした。そんな中から輩出された五輪代表。一つ新しい形が生まれたと思います。


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