継走〜衝き動かすもの(3)

 3区が終わった段階で、4位梅田までがトップと56秒差。勝負はこの4チームに絞られました。4区に入ると徐々に鶴が台が失速。鶴が台の失速はある程度予想していました(授業中のシミュレーション通り)。もっとも当日の私はアップしていたので全然見られず、知りませんでしたけど。あとは、松林がややタイムを落としたのも目に付きました。Bチームの選手の方が速かったのでした。そこを浜須賀は入澤が区間2位の好走で2位に浮上します。梅田も宮本が区間3位で差を縮めてきました。トップから31秒以内に4チーム。なお、ここで萩園の大久保が区間賞を奪取。

■4区通過順位
1.43.33 鶴が台A
2.43.41 浜須賀A(8秒)
3.43.42 松林A(9秒)
4.44.04 梅田A(31秒)
5.45.14 松林B(1分41秒)

■4区区間順位
1.8.28 大久保(萩園A)
2.8.29 入澤(浜須賀A)
3.8.30 宮本(梅田A)
4.8.35 米田(松林A)
5.8.36 久恒(松林A)

 5区になると、ついにトップが入れ替わります。鶴が台が失速し、浜須賀は部長の青木が抜いてきました。本人は「あまりにあっさり追いついたので、抜いたのがトップだったとは思わなかった」とのことです。後に当時鶴が台の高橋先生に聞いた話ですが、「とにかく4区まで逃げる作戦だった。」そうです。ともあれ、6区の私はトップでタスキをもらいました。そして同時に見た後方には松林、梅田の姿が見えました。松林は5区でも思ったほどタイムは出ず、その間に4位でタスキを受けた梅田・金正が区間賞の力走で3位に。トップから27秒差以内に4チーム。依然混戦です。

■5区通過順位
1.52.12 浜須賀A
2.52.28 松林A(16秒)
3.52.31 梅田A(19秒)
4.52.39 鶴が台A(27秒)
5.54.02 松浪A(1分50秒)

■5区区間順位
1.8.27 金正(梅田A)
2.8.31 青木(浜須賀A)
3.8.37 石田(旭が丘A)
4.8.42 鈴木(松浪A)
5.8.46 石井(松林A)

 私はアップを終えて中継所に向かった際、剱持先生からこう言われました。「後ろは付かせちゃって構わない。後半勝負。」。貧血の影響もあったため、とにかくゆっくり焦らないよう言い聞かせて入りました。1km過ぎ、早くも松林の別府に捉えられます。私は付きませんでした。前に行かせました。2位に入れればいい。しかし1.5kmもいかないあたりで、続いて梅田の相田にも捉えられました。相田とはトラックや駅伝で勝ったり負けたりを繰り返しているライバルでした。余力は残しているものの、ちょっと危うい。付くか付くまいか、迷いました。後ろを振り返りましたが、鶴が台は見えない。この3つ。落ちるのは1つ。

 と、そこで梅田の相田が松林を追って前に出て行きました。スピードを緩める様子はありませんでした。これはラッキーでした。ハイペースで入っているので、後半、抜けるチャンスがある。そう思いました。これが私の背後にぴったり付かれて2位狙いで来たら、かなりやばかったでしょう。前を追った相田は、予想通り、中間点を過ぎて梅田は徐々に失速してきました。勝負はここだ。私はペースを上げました。鶴嶺高校、円蔵中に面した大通りに戻ってきた時、順位は松林、梅田、浜須賀の順。チームメイトからは悲鳴しか聞こえませんでした。しかし私はここからペースを上げて、千の川にかかる橋の手前あたりで相田を抜き去ることに成功しました。更に北茅ヶ崎駅の付近で一度松林の別府にも追いつきました。少しの間だけ並走しました。

 ラスト800mくらい。松林の別府は再度仕掛けます。しかし、私は付きませんでした。今更ながら懺悔すると、正直、梅田を引き離したところでほっとしてしまいました。まだ余力はあったんですが、県に行けるというところで満足してしまいました。最後は消極的なレースをしてしまいましたが、何カ月も繰り返したシミュレーションからも解放される。それでほっとしてしまいました。優勝を狙っていた皆さんには申し訳ないことをしましたが、先生から「初めて言うことを守った。」と一応褒められたレースでした。ちなみに区間タイムは2年生の時のタイムより5秒遅いというものでした。後から知った話ですが、この消極的な作戦に、2年生からは先生へクレームが行ったそうです。本当に申し訳ない。

■最終順位
1.1.04.45 松林A
2.1.05.00 浜須賀A(15秒)
3.1.05.25 梅田A(40秒)
4.1.06.26 鶴が台A(1分41秒)
5.1.07.33 松林B(2分48秒)

■6区区間順位
1.12.17 別府(松林A)
2.12.48 白土(浜須賀A)
3.12.49 竹脇(第一A)
4.12.54 相田(梅田A)
5.13.03 森屋(旭が丘A)

 レースはこのように4校にチャンスがあった熾烈なものでした。当時の私たちは全国を狙う位置にはいませんでした。1学年下は全国を狙えるチームを翌年に作り上げました。思えば私の甘さはこの当時からあったのかもしれません。県レベルで精いっぱいだったのかも。でも、規模はどうあれ、優勝を狙えたレースは生涯でこれだけでした。ここまで緊張感を味わったレースもそうはないです。たかが中学生の部活動ですが、未熟な15歳のガキが、不器用ながらもそこまで思いを傾けられたことはとても大きな経験だと思います。当時から20年以上経った今も、地元の陸上競技や駅伝に執着、固執していることができるのも、私を衝き動かすのも、こういう経験をしたからだなと思います。

 今年の地区駅伝は17日(土)9時スタート。今年も私は写真を撮るべく、コース脇に立っています。出来るだけ多くの選手を撮れたらいいなと思います。

※おまけ(総合順位-総合記録-区間順位-区間記録)

■1位・松林
(5)14.32(5)14.32 中村
(2)22.48(1)08.16 池田
(2)35.06(2)12.18 野村
(3)43.42(5)08.36 久恒
(2)52.28(5)08.46 石井
(1)64.45(1)12.17 別府

■2位・浜須賀
(3)14.14(3)14.14 竹崎
(3)22.49(3)08.35 荒井
(3)35.12(4)12.23 三富
(2)43.41(2)08.29 入澤
(1)52.12(2)08.31 青木
(2)65.00(2)12.48 白土

■3位・梅田
(4)14.19(4)14.19 石井
(4)23.23(10)09.04 高倉
(4)35.34(1)12.11 木南
(4)44.04(3)08.30 宮本
(3)52.31(1)08.27 金正
(3)65.25(4)12.54 相田

■4位・鶴が台
(2)13.48(2)13.48 岡田
(1)22.15(3)08.27 戸崎
(1)34.38(4)12.23 柴田
(1)43.33(8)08.55 津田
(4)52.39(10)09.06 竹村
(4)66.26(13)13.47 沢野


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