インディカー・シリーズ初優勝の先には

 ついに掴んだ初優勝! 佐藤琢磨選手、インディカー・シリーズ参戦4年目、52戦目での初優勝です。私は琢磨選手が独走状態になってからも、残り10周を切っても、5周を切っても、3周を切っても、全然落ち着きませんでした。

NO ATTACK,NO CHANCE

それが琢磨選手のモットー。とにかくアグレッシブな走りであるがため、見ている方はドキドキ、あるいはひやひやしたという経験が一度ならずとあることでしょう。でもそれがまた琢磨選手の魅力でもあります。

 私は、F1は小学生の頃から見ていましたが、インディカー・シリーズは琢磨選手が参戦するようになってから、年間通して見るようになりました。インディカーは、元々オーバル(だ円…陸上競技のトラックのような形)主体のレースで、とにかく速い。そして最後まで息を抜けないレース。はまるには時間はかかりませんでした。最近はロード、ストリートコースの数が多くなっていますが、私はいずれのレースもそれぞれ面白くて好きです。2011年までは、シリーズの1戦として日本でもインディ・ジャパンが開催されており、栃木県のツインリンクもてぎを舞台にオーバルコースのレースが行われていました。

 日本は、ヨーロッパやアメリカほど、モータースポーツ文化が根付いているとはとても言い難い状況ですが、かつて全日本F3000や、フォーミュラニッポンといった国内のレースカテゴリーでも数多くのF1ドライバーを排出しており、バブリーな時代はそこそこ盛り上がっていたし、地上波でのテレビ放送もありました。琢磨選手がやり遂げたこの初優勝は、次代を担う選手たちに大きな刺激になったと思います。日本のモータースポーツの歴史に大きな功績をもたらしました。

 ただ、上記の通り、文化としての浸透はまだまだだと思いますので、「インディカー・シリーズって何?」「F1とどう違うの?」という声の方が、今の多くの日本人の反応だと思います。モータースポーツはお金もかかるし、開催しているサーキットは都心にはないですし、現地で気軽に始める、見る、というのが難しいのかもしれません。テレビ中継こそCS放送で流れていますが、地上波での放送はほとんど見なくなりました。

 でも、今回の琢磨選手の優勝は、モータースポーツで勝つことを、日本人でもやれるんだということを示すチャンスになると思います。2013年現在、F1にはホンダもトヨタもブリジストンも、日本人ドライバーもいません。そんな中だからこそ、この1勝は大きいと思っています。私のような貧乏人がいくらか年会費を払ってチームが潤うなんていうことはないほど、お金がかかるのはわかります。ファンの方々はその辺をもどかしく思っているでしょう。ドライバーの実力以外に、大企業にがんばってもらわないと、なかなかF1までステップアップ出来ないのが現実です。

 いつか、東京の都心のど真ん中の道路で、インディカー・シリーズやF1のレースが開催される日がやってくるような、そんなきっかけとして今回の初優勝は大事なものとなってほしいです。ここでただのまぐれの1勝で片付けられて、日本のモータースポーツの火が消えないように。琢磨選手には走り続けることで引っ張っていってほしいです。


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