新たな大会作りの可能性〜MDC東京

10月30日土曜日、駒沢公園陸上競技場で行われたTWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT in TOKYO(以下MDC)を見に行ってきました。800mや1500mといった主に中距離種目で構成された大会で、おそらく日本国内でも珍しいと思います。オリンピアンや日本の中距離界のトップ選手が所属するTWOLAPS TCが主催のこの大会。選手やボランティアの募集、グッズの販売、映像を使ったプロモーション、賞金レースの設置。大会を盛り上げようとする気持ちが大会前から伝わってきていました。私はトラックサイドで観戦できるチケットとTシャツを購入しました。当日、プログラムを見て800m、1500mだけでも多数の方々がエントリーしており、「中距離選手も沢山いるんだな」ということを実感しました。

これまで日本の中距離種目というのは、どちらかというと「中長距離」という括りで語られることが多かったのが私のイメージです。そして、これはちょっと悪口になってしまうかもしれませんが、この中長距離という括りによって、選手はどちらかというと長い方、もっと言えば駅伝を走れる選手に改造されているイメージがありました。インターハイで800mや1500mで勝っても、大学では気付けば箱根駅伝を走っている、というケースは珍しくはなかったと思います。本人の意思がどうだったかは一人一人に聞かないとわからないことではありますが、今回「中距離」を主戦場とする選手たちが数多く集まった大会がこのMDCでした。こういう背景を私は少し気にしながら、はたしてどんな大会になるか、と楽しみにしていました。

800mや1500mは、ヨーロッパを中心としたグランプリシリーズ等ではとても人気のある種目なんだそうです。私も800mや1500mのレースは見るのは好きです(自分で走るとなるときついのですが・・・笑)。トラックの格闘技とも言われているこの両種目はレース時間が数分と短めですが、位置取り、駆け引き、スパート、抜きつ抜かれつの接戦等、見所は多いと思います。ここ数年で大学や大学卒業後も中距離を専門とする選手が少しずつ出てきていることもあり、2021年は男女共に1500mで日本記録が久しぶりに更新された年でもありました。今回の大会は時期的にもアピールには丁度よかったのかもしれません。

当日は賞金100万円を賭けたメインレースの男女1000mをはじめ、各種目をトラックの間近で見ることが出来ました。チアリーダーのパフォーマンスや選手入場時、ゴール時や表彰式での演出等、色んな仕掛けや工夫がありました。金哲彦さんや増田明美さん、佐藤文康アナウンサーをはじめ、様々な方々も来場されて会場を盛り上げていました。最後にはトップ選手から小さなお子様、ご家族連れの方々まで一緒に走る色別対抗リレーもあり、そこでは楽しそうに走る選手の皆さんの表情を見ることが出来ました。運営やボランティアの方々も楽しそうでした。私は観客として見ているだけでしたが、それでも大会の雰囲気の良さ、一体感を感じることが出来、楽しかったです。コロナ禍でなければ声を出して応援出来てもっと盛り上がったんだろうなと思います。競技終了後は至る所で「ありがとうございます。」という声を掛け合ったり、写真を撮ったりしている光景を見ました。

走った方も見に来た方も、多くの方が既にSNS等で「楽しかった」と仰っていますが、そう感じられる大会を作るのはとても大事で、でもとても大変なこと。ただ時間とルールに従ってプログラムを進めていくだけなら既存の大会と同様に出来るでしょう(もちろんそれも大変なのですが)。観客動員数等、今後の課題もあるとは思います。それでも「中距離を、陸上競技をもっと盛り上げたい、楽しみたい、楽しんでもらいたい。」と言う"気持ち"と"笑顔"、"ありがとうという言葉"、これらが組み合わさった、新たな大会作りの可能性を見ることが出来たMDC。ゼロから作り上げた運営の皆さんには心から拍手を送りたいと思います。また来年以降も開催されるようでしたら、ぜひ見に行きたいです。


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