乾いた足音

タッタッタッタ…。テレビの画面越しにアスファルトを捉える乾いた足音が聞こえる。それだけで気分は高まりました。箱根駅伝、とりわけ、合宿中等の練習の風景で見受けられる集団での走り込みをしているシーンがなぜか好きでした。自分も走らなければ──。

中学生時の正月2日、3日。箱根駅伝のテレビ中継を見終わると、決まって海のサイクリングロードに走りに行きました。年末年始だろうと、テスト期間だろうと、ここに来ると、誰かしら同級生、先輩、後輩は走っていました。負けていられなかった。あの頃が一番走ることに対して何の抵抗もなく、全てを懸けられていました。

高校、大学は全く伸びず、学生生活を終えました。箱根は憧れのまま。学連でちょっとお手伝いをさせていただきましたが、自分の中では消化不良な思いが強かったです。箱根を狙えるレベルにいない自分と大学。このまま続けることに何の価値を見出せばよかったのか。大学2年くらいから迷い始めました。迷いながら、手探りしながら、やがて結果を導き出し、強くなる選手もいるでしょう。でも私の場合は、迷った時点で負けていた。

つい先ほど、箱根駅伝関連の番組を見ました。乾いた足音が聞こえてきました。でも、もうあの頃の、心の瞬発力はなくなっていました。ただ、無償に何かをかきむしられる感覚がありました。強くなりたかった。予選会で落ちた大学の選手が涙ながらに挨拶するシーン。思わず泣けた。歳を取ったなと思います。昔は敗者の姿はあまり見なかった。乾いた足音、これからは、ファインダー越しに選手を狙うモチベーションに変えていけるだろうか。


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