「エンジにW」にあこがれて

箱根駅伝が終わった余韻がまだ少々残っているこの2日間。今年もほとんど映像は見ていませんが、私が区間エントリーの際に注目していた選手が一人いました。それは早稲田大学4年生、猪俣英希選手。

存在を知ったのは去年の全日本大学駅伝です。10000m持ちタイムが29分08秒と速いながらも知らなくて、どこの高校だったんだろうなあ、なんて思いながら見ていました。そして去年の暮れに本屋で立ち読みした箱根駅伝のガイドブックの特集記事で猪俣選手が会津高校から一般入学で早稲田競走部に入ったことを知りました。

私、こういう選手を見ると心を揺さぶられます。おそらくはテレビでもその辺はアナウンサーが紹介していると思いますが、早稲田の魅力はこうした一般入試組の叩き上げの選手がメンバー入りして活躍することですね。ここ数年は推薦制度が変わったようで、強力な選手が多く入学するようになったようですが、私が中高生の頃の早稲田は、一握りのいわゆるスター選手の特別選抜組と一般入試組とが混在するチームでした。私の中学の先輩、Tさんはやはり一般入試で進学し、1993年の早稲田が優勝した時のアンカー。当時はTさん以外にも職人張りのいぶし銀の走りをする選手が沢山いました。5000m、10000mでは勝てないが、20kmなら勝負できる。ひたすら長い距離に懸けてきて、泥臭く走り込んできた選手たちが、箱根路を彩ってきました。

猪俣選手も高校時代5000m15分30秒台だったとのことです。それが4年間で5000m14分05秒までタイムを上げてます。そして何と言っても山登りに大抜擢。一般入試組では出色のタイム、実績じゃないでしょうか。私は残念ながら頭が足りなかったので、早稲田に入学することはできませんでしたが、こうした選手の存在を心の支えに箱根のビデオを何度も見返したり、ニュースステーションで組まれた特集を何度も見返してモチベーション高めて、浪人中もひたすら長い距離を走っていました。どこ行ったのかな、あのビデオテープは…。

ただ、最後に付け加えると、後輩や知り合いの早稲田の方々に聞いたところ、決して一般入試組の選手が全員が思うように伸びていったか、面倒を見てもらえるか、というとそんなことはなく、学連含めた裏方に回る人や、途中で部を去っていく人も沢山いるようです。かつて関東インカレに来ていた早稲田の補助員で写真を撮ったことがあるんですが、映っていた5人のうち1人は学連に行き、1人は箱根を走り、中には辞めた方もいたことを知りました。箱根メンバーを勝ち取るのはもちろん素晴らしいこと。今回の猪俣選手には拍手を送りたいです。その一方で夢破れていった選手たちや、裏方に回る学生の思いも全部ひっくるめて、混在する。それが箱根駅伝の伝統や襷の重み、そして魅力なんでしょう。

猪俣選手は、私のかつての憧れだった存在を呼び覚ませてくれました。なんだか懐かしい気分です。


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